2024年 1月の星空を撮る





東雲の空 火星と水星の大接近 -金生山-

気温は低いが寒中とは思えないよどんだ空
本当は昨日が火星と水星の大接近だったが、天候が悪くて断念。空の透明度が低くて見つけられるかどうか心配したが、金星を目印にすると東南東の低空にすぐに見つかった
凍える朝だった

このときの金星(Venus)の明るさは ー4.0等、火星(Mars)は1.3等、水星(Mercury)は-0.3等

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100mm、ISO800、f4.5、2秒、マニュアルWB、Raw
高感度NRはoff、長秒時NRはon、金生山
SONY α7RM5 + FE 100-400mm F4.5-5.6 GM OSS

2024年1月29日06時04分







月面に到達したSLIMを想像して、月を見る -揖斐谷-

JAXAの小型月着陸実証機SLIM(Smart Lander for Investigating Moon)は、2023年9月7日にHⅡ-Aロケット47号機で打ち上げられた。打ち上げ時の地球周回軌道から月遷移軌道へメインエンジンの噴射により投入されたのが10月1日。その後月の重力を利用してスイングバイが行われ、12月25日に月周回軌道に投入され、1月20日に着陸地点に降下。目標地点からわずか55m離れた点で接地した

着陸目標地点のクレーターはSHIOLI(栞)として名称が設定されている
虫眼鏡で覗いてみても、当然のことながらSLIMはもちろん、SHIORIも見えない
でも地球から見ている月にSLIMが到達したことは間違いない

月周回衛星「かぐや」が月面へ制御落下したのが2009年6月11日。早いもので15年の月日が流れた
「かぐや」には私の詠んだ五・七・五も一緒に搭載されていた。一足早く月面でSLIMを待ち受けていたかと思うと、時間の流れはほんの一瞬に感じられるから不思議だ

ところで月を撮るときにいつも、兎はいるかなと想像した子どもの頃の自分を思い出す
日本では月の兎は餅をついている様子を思い浮かべるが、何を思うかは国や地域によって異なる
日本で杵と臼を使って餅をつく様子が現れるのはそんなに古いことではなく、17世紀になってのことらしい(庄司大悟「月のうさぎはいつどのようにして餅をつき始めたのか」(『地質と文化』第4巻第2号掲載、2021年))

中国では前漢末に西王母の図像が出現するが、陶器などにあらわされた西王母は崑崙山に座り、臼と杵で不死の仙薬を搗く兎、三足鳥、九尾狐などの瑞獣を伴っている。兎は月兎、三足鳥は八咫烏、九尾狐は玉藻前として日本の伝説・説話に登場する。八咫烏は日本サッカー協会・日本代表のエンブレムの意匠としてよく知られている馴染みの瑞獣だ
つまり、中国では月兎は搗いているのは餅ではなく不死の仙薬だった(岡村秀徳『鏡が語る古代史』2017年、ほか)

さて今宵の兎は何を搗いているだろうか

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400mm、ISO200、f8、1/200秒、マニュアルWB、Raw
高感度NRはoff、長秒時NRはon、金生山
SONY α7RM5 + FE 100-400mm F4.5-5.6 GM OSS

2024年1月27日21時27分







2024年最初の満月の出 -金生山-

1月24日の大雪のため美濃平野部も雪で覆われた。雪国ではない金生山も、そしてそこから見下ろす濃尾平野も一面真っ白になった。大雪から2日が過ぎているが、それでもここまで白くなっていることは驚きだ

今日は2024年最初の満月。正しくは02時54分が満月だから、満月から15時間ほど経過している
雲が多くて、空気ももやっとして冬らしくない。諦めかけたところ、百々が峰の左から月が出た。この直後に月は雲に隠された

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100mm、ISO400、f8、1/3秒、マニュアルWB、Raw
高感度NRはoff、長秒時NRはon、金生山
SONY α7RM5 + FE 100-400mm F4.5-5.6 GM OSS

2024年1月26日17時41分





星は巡る 冬から春へ
1月14日 揖斐谷




星は巡る 冬から春へ

1月12日、13日は初虚空蔵。虚空蔵菩薩の縁日で、曜日に関係なく毎年この両日行われ、多くの参詣者で賑わう。雪降る中の初虚空蔵ということはあっても、雨が降る中の初虚空蔵はあまり記憶にない

12日は19時から柴燈護摩供に続いて火渡り修行が営まれた。今年も多くの参詣者が火渡りに臨まれたが、強くないものの降りしきる雨の中だった。身体が冷えて寒くて、風邪を引いたのか13日の朝はしんどかった

予報では日付が変わる頃には雲が切れて、晴れとなる模様。新月だから晴れれば星空が見られるはず
新月期であっても2時頃になると街明かりはぐっと少なくなり、良好な星空が望めるようになる。それを期待して0時過ぎに家を出ようとすると路面がカリカリに凍り付いていた。登山靴にアイゼンが必要なほどの凍結は久し振りだった

右下の木立に沈もうとしているのが冬の星座を代表するオリオン座。1等星のベテルギウスがひときわ赤く輝く。ベテルギウスと冬の天の川をはさんで左上にはこいぬ座の1等星プロキオン。その右上にはふたご座のカストルとポルックス。カストルは青白く輝きポルックスは少し赤味がかった輝きたからすぐ識別できる。カストルとポルックスの右上にはかに座。春の星座だ。カニの甲羅の部分には「かに座の宝石箱」とも言われるプレセペ星団が輝く。さらにその左上にはしし座の「ししの大鎌」で青白く輝くレグルスが目にとまる

季節はいつの間にか春へと変わり、星の巡りに時の流れを教えられた寒冬の夜だった

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14mm、ISO800、f2.0、40秒、マニュアルWB、LEE SP-31 ソフト №1、Raw
高感度NRはoff、長秒時NRはon、赤道儀で恒星追尾撮影、揖斐谷
SONY α7RM5 + FE 14mm F1.8 GM

2024年1月14日01時31分






月と金星、水星、アンタレスの集合
2024年1月9日 金生山






2024年1月9日 04時56分








2024年1月9日 05時50分








2024年1月9日 06時13分


月と金星、水星、アンタレスの集合

2024年1月は日の出前の南東の低い空に金星と水星の2つの内惑星が集合する。またさそり座の1等星アンタレスも加わり、さらに9日には月齢27.5という新月の2日手前の細い月が加わった。金星の光度は-4.0等、水星は-0.2等、アンタレスは1.1等。本当は水星のさらに下に火星が顔を出しているはずだが、地平線近くの低空のため残念ながら確認できなかった

太陽系で太陽に最も近い軌道を周回する水星。普段は太陽に近すぎて、見ることは難しい。しかし水星は1月12日に西方最大離角を迎えるので、その頃には明け方の東の空に見られる可能性が高くなる。この朝はあわよくば金星と水星の2つの内惑星と新月前の細い月、さそり座のタンタレスが撮れるはず。2時半に目覚ましをかけて金生山まで出かけた。片道35㎞の距離はなかなかしんどい

さて結果だが、上の写真の通り。火星は確認できなかったが、今月の28日には火星と水星の大接近が見られるはず。天気さえ良ければ、という条件付きながら。この日、1月9日はアンタレス食だが、残念ながら日本からは見られない

水星は地平線ぎりぎりに出ることを覚悟したが、思った以上に高い高度で確認できた。金生山は東天の眺望は文句なしに優れている。この日の日の出は7時頃だったが、6時を過ぎた頃からの空が見事に輝いた
今日はいいことがありそうだ











しぶんぎ座流星群
-揖斐谷-





しぶんぎ座流星群 -揖斐谷-

8月のペルセウス座流星群、12月のふたご座流星群と並んで三大流星群と呼ばれる。その中でもっとも馴染みが薄いのが、1月のしぶんぎ座流星群ではないだろうか。これはひとえに極大期の寒さが観望を妨げているせいだと思っている

しぶんぎ座(Quadrantids)はかつて存在していた星座で壁面四分儀座と呼ばれていた。フランスの天文学者ジョゼフ=ジェローム・ルフランセ・ド・ラランド(1732-1807年)によって名付けられた星座で、その名は天体観測機器の四分儀に由来する。2世紀にエジプトのアレクサンドリアの天文学者クラウディウス・プトレマイオス(クロード・トレミー)が定義した48星座を元に、18世紀にフランスのラカイユが88星座に整理した際に壁面四分儀座はその名を消して今日に至っている
しぶんぎ座流星群の放射点付近にははっきりした星座はないため、現在でも流星群の名としてその名が使われている。星座の命名則だが星占いでは「双子座」と呼ばれても天文学では「ふたご座」が正しく、「双子座流星群」ではなく「ふたご座流星群」が正しい。同様に「四分儀座流星群」という表記もなく、「しぶんぎ座流星群」が正しい。IAU(国際天文学連合)で確定した和名は IAU番号10が「しぶんぎ座流星群(Quadrantids)」、IAU番号7が「ペルセウス座流星群(Perseids)」、IAU番号4が「ふたご座流星群(Geminids)」である

しぶんぎ座流星群の母天体だがこれがよく分かっていない。候補としては小惑星2003EH1が有力視されている
三大流星群に数えられるが条件が満たされないと大出現にはお目にかかれない。何よりも1年で最も寒い時期で、観察・撮影以前に、寒さに耐えなければならない。これが最大の難敵
2022年1月は明け方に極大を迎えるオモテ年と新月期が重なるという8年に1度の好条件だったが、見事にハズレ。その8年前の2014年は大出現が見られただけにショックは大きかった

今年は予想される極大が1月4日17時59分で、放射点が上って来ない時間帯に相当する残念なウラ年。さらに下弦を過ぎたばかりの月が夜半に上ってきて、観望を妨げる。まあダメ元で新年の運だめし。見られれば幸運という軽い気持ちで撮影に入る。それにしても寒くて、次から次へと凍り付く真冬の恐ろしさを久し振りに思い知らされることとなった
しぶんぎ座流星群の放射点は北斗七星を柄杓に見立てたとき、立てた柄の先端の左下辺りに相当する。確かに目立った星座はない。北斗七星を目印にするのが簡単だ

揖斐谷から東天を望むと、山稜が邪魔をする。この夜は北斗七星の柄杓の柄の先端が山際から上に出たのが23時40分。下弦を過ぎたばかりの月が出るのが24時32分。放射点が20度を超すのが1時40分だが、この時にはすでに東南東から出た月が夜空を照らしていた。なんとも残念な年だ。太平洋側の水平線や地平線が見られるところであれば、長時間の観望・撮影が可能になるはず。もっとも揖斐谷が冬型の天候にならずに雪雲に邪魔をされないだけ幸運と思うしかない

この夜最初にしぶんぎ群を捉えたのは0時59分。この時放射点の高度は14.76度。写真では右の山際に出かけている月をギリギリで切って赤道儀にセットしたカメラを向けている。右の山際からの下弦を過ぎたばかりの月は、強烈な光を放っていて上の写真でも月出後の明るい夜空がわかる。次に捉えたのはこの4分後の1時03分。放射点高度は15.22度。上の写真は群流星が写った2枚を恒星基準で合成した。流星それぞれの経路を逆に延長すると延長選は山際で交わり、放射点がちょうど山から姿を出した頃ということがわかる

しぶんぎ群の対地速度は41km/sで、ふたご群より少し速いがオリオン群・みずがめ座η群ほどではないので観望になれると、ああしぶんぎ群だとすぐわかる
この夜は3時01分まで撮影を継続したが、最後は寒さに負けて撤退した。晴れているだけに月明かりは強烈で、昼間のような辺りを照らしていた
新年の運試しは中吉といったところか。極大予想時刻を6時間過ぎていたが、極大後は流星数が急速に減ることが多いことからすると予想外に流れたという印象だった。各地での観測はどうだっただろうか


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12mm、ISO2000、f2.8、30秒、マニュアルWB、LEE SP-31 ソフト №1、Raw
高感度NRはoff、長秒時NRはon、赤道儀で恒星追尾撮影、揖斐谷
SONY α7RM5 + FE 12-24mm F2.8 GM

2024年1月5日00時59分 + 01時03分 2枚を恒星基準で合成






1月2日の星空
-揖斐谷-





1月2日の星空

揖斐谷は太平洋側に位置するが冬の天候は福井県嶺南地方とほぼ同じ。年初から寒が明けるまでどんよりとした雪雲に覆われ、星空は望むべくもないのが普通。夏と冬の2回実施される環境省「夜空の明るさ調査」。この冬は1月2日から15日までが決められた調査期間。日没後1時間半経過時から2時間以内に、デジタルカメラを使用して決められた方法で星空を撮影し、データを送信する
厳冬まっただ中なので、過去には自宅から登山靴に軽アイゼンをつけて完全冬装備で山へ上がったこともあるほどだが、今年はどうしたことか雪がない
正確には年末に降った雪は正月前に消え、夏と変わらず車で上がることができる。楽な冬だが、このまま終わるとは考えられない。反動が恐ろしい

元日の16時10分に発生した能登半島地震。ちょうど車が自宅に着こうとするときにラジオから緊急地震速報が流れ、車をとめると自宅の窓やシャッターが音を立てて大きく揺れていた。緊急地震速報がなかったら突風かと間違えそうな感じだった。自宅の中へ入ると、書棚から何冊が本が飛び出していたが、落下した本の数は兵庫県南部地震の時ほどではなかった
被災地はこれまで何度も訪れたところ。地名が出る度に心が苦しくなる

2日は「夜空の明るさ調査」のために準備しているとラジオから羽田空港での航空機のニュースが流れてきた。一寸先は闇という言葉があるが、ほんの1日前まで雪もなく穏やかな正月と思っていたのが嘘のよう

2日の夜は月出までは快晴の夜空に星が輝いた。月の出までは星空が撮れる。正月に星空が撮影できるとは珍しいことだ
この夜取得した夜空の明るさのデータは 20.6 mag/□" (速報値)
近隣の施設の街灯の光害はあったものの、正月とあってか比較的良好な星空だった。夏の観察では 20.77 mag/□"だった。これは空の1平方秒角あたりの明るさを星の等級で表したもの。未明の2時頃ならさらに良好となる。夏と比べて少し悪くなっているように見えるが星空環境は天候にも大きく左右されるので、単純に比較はできない。夜が更けると近隣施設の照明が消灯されるのでもっと良好な値となるはず。20以上21未満の値について環境省は「山や海などの暗さ、天の川がよく見られる」としている

22時半を過ぎると近隣の施設の街灯が消灯されるためもう少し良好な星空が期待できるが、月出となるためやむを得ない。とりあえずこの時期に星空が撮れたことで満足するしかない
写野中央にカシオペヤ座、その左にはアンドロメダ座大銀河M31。右上のペルセウス座へ続く秋の星空
撮影時刻が早いため、星の巡りはまだ秋


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28mm、ISO2500、f2.8、30秒、マニュアルWB、サイトロンジャパン・スターエンハンサー、Raw
長秒時NRはon、赤道儀で恒星追尾撮影、揖斐谷
SONY α7M3 + TAMRON 70-180mm F2.8

2024年1月2日19時38分